誓い
彼が記した彼の思想や彼の過去、私達がこれから大人になり生きていくために必要な言葉が、運良く形として今手元にある
これを捨てずに取っていた18の私を褒め讃えたい
高校3年の終わり、3月に高校を辞めた
在籍期間で言うと他の子と変わらないが、卒業式は保護者席で見た
あの頃は、今日、死なずに生きているためだけで精一杯だった 歩いているだけで苦しくて涙が出た 家から出られなかった 誰とも話せなかった
もちろんそんな状態で将来のことを考えることなど到底無理で、最後の最後で単位が足りず中退ということになった
19で死のうと思っていた とにかく家を出たかったので親が仕事に出ている日中に荷物を送り置手紙を書いて飛行機に乗った
何度も考えた あの時もう少し頑張れたんじゃないか、違う選択があったんじゃないか
ただあの時の私にはどうしても出来なかったし、付け焼き刃でその先のことを決めなくて良かったと今は思っている
人より幼くて、人より大人だったと思う
自分の中で考えてしまうことや感じることが多過ぎて、他のことが手に付かなかった
知らない土地に来て、働いて、たくさんの人に出会った
生活をすること、お金を稼ぐこと、知らない人とコミュニケーションを取ること、どれも最初は全然上手くいかなかったが今はかなり成長したと思う それだけでも家を出た意味はあった
これから自分はどうしたいのか、どんな大人になりたいのか、一人でずっと考えてきた
たくさんの大人に会った 立派だな、と思う人はかなり少数で、こうはなりたくないと思う人の方が断然多かった
今私は、彼と同じ職業になろうとしている
結局彼の真似事みたいで恥ずかしいのだがそれ以外の選択肢は見つからなかった
そのためにどうすればいいのかは、彼が身をもって証明してくれていた
確かにこわい、自信はない、ただこうするしかない、こうしたいということははっきりと分かる
当時の彼の言葉が痛いほど突き刺さる
苦しくて泣きそうになる
彼の人生は確かに彼のものだが、そのレールを走りたい、追いつかなくても転んでも、走りたい
当時彼がシンパシーを感じた人間が私ともう一人いるそうだ
近々その子に会いに行こうと思っている
その子は今どうしているんだろう、どういう大人になろうとしているんだろう
彼が好きだ 確かに好きだ
彼は私の未来 生きる意味として存在しているんだと思う それを愛せている 大丈夫 私は大丈夫、生きていける、ちゃんと卒業出来る
今言うことは受け売りなんかじゃない
約束でもない 誓いだよ
嘘つきだった僕には戻れない
朝日色の指輪にしよう
胸の高鳴りを重ねて踊ろうよ
今を生きることを祝おうよ