宇宙に思いを馳せて

私の友人に一人、宇宙人がいる


ふざけている訳ではなくて、どうしてもそうなのである 彼女は地球に向いていない


まず所謂三大欲求というものが無い

彼女と食事をしているといらいらする

眠るのも惰性だと言う

もちろん性欲もない 恋もしない

昨日髪のにおいを嗅ごうと近付いただけで酷く拒絶された


彼女といつ、どうして仲良くなったのかはよく覚えていない

これも「なるべくしてそうなった」としか言いようがない


彼女は自分では自分のことが何も分からない

私が何年も説得をしてやっと自分が人間でないことを納得してくれた


彼女は真面目過ぎる みんなと同じように人間として生きようとする

真面目が空回りしているのか、一冊の本に付箋を50枚くらい貼ったりする 馬鹿だなあと思う

ただそれは彼女の本質ではなく環境がそうさせているだけなのである

そもそも「人間として」という前提自体が間違っている

 


仮に彼女の名前を「あいか」とする

私は小学生の頃に「あいかなんて名前は大嫌い」と言ったのを覚えている

彼女の前では名前も然して意味を持たない

 


彼女は綺麗だ 特段美人という訳ではないのだけれど、余りに綺麗なので妬いてしまう

彼女の写真を人に見せるとみんな喜ぶ 彼女はみんなに愛されている 宇宙人のくせに

 


私は彼女の前では何者でもなくいられると昨日気付いた

女でも男でも、お母さんでも妹でもない、彼女がそうだから、私もそうなるんだと思う

 


彼女とこの間歌を作った 彼女が詩を書いて、私が曲を付けた

控え目に言って、宇宙一良い曲だと思う

 

 

 

一度だけ、彼女をオカズにしたことをまだ誰にも話していない