Play A Love Song
確かに私は幸せで、人に愛され、器用な手先と頭を持っていて、好きな人が喜んで抱いてくれる程度の容姿があって、まあ、幸せなんだろう
どうして自分が不幸なのかずっと分からなかった
分からないけど不幸だ、毎日毎晩得体の知れない苦しみや不安に苛まれている
友人にそう言って少し分かったことがある、事実として幸か不幸かは関係なく、幸せを感じる部分がほとんど機能していない
その上少しいいことがあると、その後は突き落とされるんだろう、怖い、という思いが先行して、手放しに幸せだ!と言えない
このままじゃずっと不幸だよ、少しずつ認めたい、私は幸せだって
どうしても見たい展覧会があって、私の好きなあの街に来ていた、私の好きな人の住む街
会ってみたいなと思っていた男の子に、勇気を出して人伝てに飲みに行きましょう、と誘った
ほとんど話したこともなかった人間に急にそう誘われたらどうして?と思うはずなのに、細かいことは何も聞かずにいいよ、と言ってくれたのが嬉しかった
私が思っていた通りに、いやそれ以上に面白い子だった、私のぼやっとした質問に、丁寧に答えてくれた
こういう再会とかいうものは、本人らの意志に関係ないところからぶっ飛んでくるらしい
その子は、あの人呼んでみるか、と、彼を呼んだ
その後はご想像にお任せ致します
ただ前回のように身構えず、ある程度自分の中で彼に対してのスタンスが固まっていたので、至極自然に話せたし、ただ、楽しかった
ここままでいいや、と思えた
春になればまた会える、彼と音楽や、文学や、これまでのこととか、これからへの不安や期待とか、そういうのを話せたらそれだけでいいや、と心から思った
一人になると例の如く欲が出て、私だけじゃなくてもいいけど私でもいいでしょうとか、そういうことまで言うならちゃんと惚れて、とか、
私には彼が傲慢で愚かに見えるように、そういうことを言ってしまったら私のことも彼にはそう見えるのでしょう
私が誰かと結婚することになったら、本当に二度と会えなくなるのだったら、好きだと伝えることにします