罪と罰
名前はすごいと思う
付けられた名前によって人生が彩られているのだと感じる
あの子も、あの子もそうだな、ちゃんと名前で呼んであげようと思う
彼の名前がすごく好きだけどこれからもずっと彼の肩書でしか呼べないと思う
名前を口に出すと舌が切れそう、頭が混乱する
彼の名前は正しい
彼は多分誰にも言われたことがないだろうし自分では気付いていないだろうけれど真っ直ぐで純粋だ 非常に正しい
ただ今度は私の名前をちゃんと呼んで欲しい
人の記憶に最後まで残るのは香りで、先に消えるのは声だそうだ
確かに好きだった人が私をどんな風に呼んだか思い出せない
今度会ったら写真を撮ろう
彼や、みんなが確かに生きていた証拠が欲しい
自分の目で見えているものは一番信用出来ない
例えば青という色が隣の人とは全然違うものかもしれない
本当はこの星には何も無いのかもしれない
綺麗じゃなくても、いつまでも現像出来なくても、写真を撮ろう
今日も一人で寝ないといけないのか、嫌だな、今日は猫を布団に入れてあげよう
p.s. 猫は布団に入ってきてくれませんでした
彼女は私に似て意地が悪いです 全部分かった上でそういうことをします